ビールの造り方 ~総集編~
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ビールは、麦芽(モルト)・ホップ・酵母・水を
主原料とする飲料です。
ビールの醸造工程はおおまかに、
「製麦」「仕込み」「発酵」「貯酒」「ろ過」「瓶詰」です。
まずはこのうち「製麦」の工程について、解説していきたいと思います。
麦芽とは、発芽させた麦(大麦、小麦)のことで、主に二条麦が使われています。
ビール醸造においての麦芽は、デンプンの原料としてだけでなく
C. Lintnerが「麦芽は、ビールの魂である」と言っているほど、
ビールの品質に大きな影響を持っています。
「製麦」は、浸漬・発芽・焙燥の過程を経るものです。
麦を発芽させる条件は十分な水分、適当な温度、酵素の3つとなります。
もともと麦は、水分が約38%で発芽をはじめ、
胚盤や糊粉層への水の浸透で胚乳の中の貯蔵物質変化が始まります。
麦を浸漬させ、40~45%に調整、2日ほどの間にいかに酵素が生成・活性化するかで
麦芽の品質が決まると言われています。
続けて「仕込み」について、詳しく解説してきたいと思います。
「仕込み」の解説にに入る前にビールの原料の一つ、ホップについてです。
ホップ(和名;セイヨウカラハナソウ 学名;Humulus lupulus)は、
アサ科の蔓性の多年草、雌雄異株の植物であり、
ビール醸造では、雌株の「毬花」だけが用いられます。
毬花は、花を保護する苞という葉が重なった形をしており、
その花を縦に割ると、苞の付け根に「ルプリン」と呼ばれる黄色の顆粒が見えます。
このルプリンにビール醸造に欠かせない成分、樹脂と精油があります。
樹脂がビールの苦み成分、精油が芳香成分となり、
その他、フェノール成分、セルロースもビール醸造で重要な働きを持ちます。
仕込み工程は、粉砕、糖化、麦汁ろ過、麦汁煮沸、冷却、発酵工程となります。
ここでは、ビールの種類、品質に適した水、原料を選択し、仕込み方法、
各工程の時間と温度が調整を行い、工程を進めていきます。
-----仕込み~粉砕から麦汁煮沸~の続きはこちらから-----
仕込み~粉砕から麦汁煮沸~」編に続いて、
ここから「仕込み~冷却~」について、詳しく解説してきたいと思います。
仕込みの最終工程が「冷却」です。
麦汁を煮沸した後、発酵工程の前に酵母が働ける温度に麦汁を冷やす工程が「冷却」です。
煮上がり麦汁から熱トループ、ホップ粕を取り除いた後、雑菌の繁殖を防ぐために急冷をします。
その後エアレーション、酵母添加をして、発酵タンクに送っていきます。
熱トループは、タンパク質、タンニン、炭水化物などからなります。
酵母に吸着して発酵を妨げ、ビールの泡持ちも低下させるなどの影響を及ぼすため
これを分離していきます。
熱トループの分離後、熱い麦汁を酵母添加できる温度まで急冷し、
酵母の増殖に必要な酸素供給のためのエアレーションを行います。
60℃以下になるとタンパク質とタンニンからなる冷トループで濁ります。
この冷トループの除去については議論が分かれるところです。
ビールの発酵にはたらくビール酵母 Saccharomyces cerevisiae は、
麦汁中のマルトース資化能の高い酵母が選択され、大量のアルコール生成と優れた香り、
味を醸成します。
冷却した麦汁に1~2×107cell/mlの酵母が添加されます。
前発酵後の発酵液は香り、味とも未熟であるため、後発酵タンクで熟成します。
香味豊かなビール造りには、発酵時に酵母をより良い状態に保つための
酵母の状態、麦汁の組成管理がポイントとなります。
また貯蔵中の低温下で酵母などが沈殿、
炭酸ガスが溶け込んでビールの発泡性が付与されます。
ビールのろ過工程により、
タンパク質・ポリフェノール結合物・ホップ樹脂・酵母・固形物等が除去され、
ビールの透明な黄金色が得られます。
熱処理ではなくろ過されたもの、無濾過のものを「生ビール」といい、
酵母の働きを抑えるのに熱処理をする場合もあります。
ビンや缶に詰められた後に長期間の保存に耐えうるビールにするための
ビールのタンパク質やポリフェノールの除去は、
泡持ち・コク・ボディに大きく作用するので、
作り手のこだわりがでる工程の一つです。
ビールの醸造を見ていくことで「おいしい」をつくるためのポイントや
「何をどのくらい行うのか」など、造り手の考えや想いを盛り込めるのが
ビールなのだという部分が感じられたのではないでしょうか?
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