【ビールができるまで】仕込みについて ~冷却~ 

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ビールは、麦芽(モルト)・ホップ・酵母・水
主原料とする飲料です。

ビールの醸造工程はおおまかに、
「製麦」「仕込み」「発酵」「貯酒」「ろ過」「瓶詰」です。

 

前回のブログ「仕込み~粉砕から麦汁煮沸~」編に続いて、
今回は「仕込み~冷却~」について、詳しく解説してきたいと思います。

 

仕込みの最終工程の「冷却」です。

 

麦汁を煮沸した後、発酵工程の前に酵母が働ける温度に麦汁を冷やす工程が「冷却」です。
煮上がり麦汁から熱トループ、ホップ粕を取り除いた後、雑菌の繁殖を防ぐために急冷をします。
その後エアレーション、酵母添加をして、発酵タンクに送っていきます。

熱トループは、タンパク質、タンニン、炭水化物などからなります。
酵母に吸着して発酵を妨げ、ビールの泡持ちも低下させるなどの影響を及ぼすため
これを分離していきます。

熱トループの分離後、熱い麦汁を酵母添加できる温度まで急冷し、
酵母の増殖に必要な酸素供給のためのエアレーションを行います。
60℃以下になるとタンパク質とタンニンからなる冷トループで濁ります。

この冷トループの除去については議論が分かれるところです。

 

ビールの発酵にはたらくビール酵母 Saccharomyces cerevisiae は、
麦汁中のマルトース資化能の高い酵母が選択され、大量のアルコール生成と優れた香り、
味を醸成します。

冷却した麦汁に1~2×107cell/mlの酵母が添加されます。
前発酵後の発酵液は香り、味とも未熟であるため、後発酵タンクで熟成します。
発酵性糖の残量が十分にないと熟成過程が十分に進行しないし、
多すぎると最終的に糖が残ります。

酵母数は少ないと後発酵が遅くなり、ビールの質(香味や泡持ち)に影響が出ます。
発酵中、発酵液の主に有機酸の生成によりpHが下がり、
pHが低くなることで有害微生物の増殖が減る一方、
劣化臭物質が遊離しやすいと考えられています。

香味豊かなビール造りには、発酵時に酵母をより良い状態に保つための
酵母の状態、麦汁の組成管理がポイントとなります。

また貯蔵中の低温下で酵母などが沈殿、
炭酸ガスが溶け込んでビールの発泡性が付与されます。

 

 

ビールのろ過工程により、
タンパク質・ポリフェノール結合物・ホップ樹脂・酵母・固形物等が除去され、
ビールの透明な黄金色が得られます。

熱処理ではなくろ過されたもの、無濾過のものを「生ビール」といい、
酵母の働きを抑えるのに熱処理をする場合もあります。

ビンや缶に詰められた後に長期間の保存に耐えうるビールにするための
ビールのタンパク質やポリフェノールの除去は、
泡持ち・コク・ボディに大きく作用するので、
作り手のこだわりがでる工程の一つです。

 

ビールの醸造を見ていくことで「おいしい」をつくるためのポイントや
「何をどのくらい行うのか」など、造り手の考えや想いを盛り込めるのが
ビールなのだという部分が感じられたのではないでしょうか?

 

醸造の工程にこだわって造ったビールが「おいしい」と
評価される醍醐味が造り手をわくわくさせ、
だからこそ、多様なビールが市場に出ているように思います。

 

 

熱トループ:麦汁煮沸で生じたブルッフ

 

【参考】
ビール酒造組合 国際技術委員会編,  ビールの基本技術, (公)日本醸造協会 

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