【ビールができるまで】仕込みについて ~粉砕から麦汁煮沸~

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ビールは、麦芽(モルト)・ホップ・酵母・水
主原料とする飲料です。

ビールの醸造工程はおおまかに、
「製麦」「仕込み」「発酵」「貯酒」「ろ過」「瓶詰」です。

 

前回のブログ「製麦」の工程に続いて、
今回は「仕込み」について、詳しく解説してきたいと思います。

 

 

「仕込み」の解説にに入る前にビールの原料の一つ、ホップについてです。

ホップ(和名;セイヨウカラハナソウ 学名;Humulus lupulus)は、
アサ科の蔓性の多年草、雌雄異株の植物であり、
ビール醸造では、雌株の「毬花」だけが用いられます。

毬花は、花を保護する苞という葉が重なった形をしており、
その花を縦に割ると、苞の付け根に「ルプリン」と呼ばれる黄色の顆粒が見えます。
このルプリンにビール醸造に欠かせない成分、樹脂と精油があります。
樹脂がビールの苦み成分、精油が芳香成分となり、
その他、フェノール成分、セルロースもビール醸造で重要な働きを持ちます。

 

仕込み工程は、粉砕、糖化、麦汁ろ過、麦汁煮沸、冷却、発酵工程となります。
ここでは、ビールの種類、品質に適した水、原料を選択し、仕込み方法、
各工程の時間と温度が調整を行い、工程を進めていきます。

 

皆さんご存知かと思いますが、ビールの仕込みに使われる水(醸造用水)の水質は、
ビールの品質に大きな影響を与えます。
醸造用水の条件は、まずは厚生労働省の水道水水質基準を満たし、
無味無臭、無色透明で有害物質を含まず、有機物も多く含まないこと。

醸造用水の硬度はビールの品質に大きく影響するので、
求めるビールのタイプに合った水質の水で醸造を行います。
そのために水の成分を分析したり、事前に水を改善する操作したりして、
つくりたいビールに合った醸造用水でビールが作られます。

 

麦芽の破砕により、可溶性物質が溶け易くなり、
また不溶性物質が化学的、酵素的作用を受け易くしてエキスの収得率をあげていきます。

ただし、細かすぎるとタンニンの溶出が促進してえぐみがでてしまったり、
後工程の麦汁のろ過で麦芽の皮が影響したりするので、細かければよいというわけではなく、
適切な粉砕が求められます。

 

糖化工程では、粉砕した麦芽、でんぷん質、副原料を温水と混合して可溶性物質を浸出させて、
これを麦芽の持つ酵素で可溶化、ビール酵母が使える糖分に分解します。

糖化工程を経たマイシェの溶解性物質を含む麦汁と麦粕を分ける工程が麦汁ろ過の工程である。
糖化終了後のろ過した麦汁を第一麦汁といい、麦皮が主となる麦層に残るエキス分を湯で洗浄、
回収して得られたろ過麦汁を第二麦汁と言います。
「一番搾り」で、清澄度の高いクリアな麦汁を得ることが重要です。

 

麦汁煮沸工程は、ろ過後の麦汁を煮沸する工程であり、ここでホップを添加します。
煮沸工程の目的は・・・

①第二麦汁を得る際に希釈された麦汁から水分を蒸発させ、エキス濃度を上げる
②ホップの苦み成分は加熱により形が変わって可溶化するので、
 煮沸中にホップを添加することで麦汁に苦みを加える
③熱によるタンパク質を凝固させる。
 熱変性をしたタンパク質はタンニンを結合してブルッフという凝固物となり、
 最終製品の保存中の耐久性が上がる
④煮沸中にメラノイジン生成とタンニンの酸化で麦汁の色度を上げる
⑤還元性物質の生成により、ビールの香味耐久性を上げる
⑥麦芽に付着していた微生物を完全殺菌する
⑦麦汁中に残っている酵素活性を完全に失活させ、製造工程中の組成変化を防ぐ
⑧ホップ由来の揮発性物質が含まれるが、十分な煮沸によりビールの硫黄臭のもととなる
 ジメチルサルファイドの生成のもととなる前駆物質を分解、蒸気とともに揮散させる

このような事項になります。
ビールの香り、味わいは多くの作用で生まれていることが伺われます。

次回は「仕込み」の「冷却」と「発酵工程」について、解説していきます。

 

【エキス】酒類を熱したときに、蒸発せずに残渣として残る成分(不揮発性成分)。糖や多くの有機酸など

【マイシェ】原料と温水の混ざった糖化もろみ

 

<参考文献>
ビール酒造組合 国際技術委員会編,  ビールの基本技術, (公)日本醸造協会 
村上 敦司, ホップの探求, 日本醸造協会誌, 783, 2010年
富川泰敬, 図解 酒税, (一般社団)大蔵財務協会, 令和元年

 

 

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