【ワインの造り方】白ワインの製造
投稿日:
前回の赤ワインに続いて、今回は白ワイン醸造について解説していきます。
白ワイン醸造に用いられるブドウ品種は、シャルドネ、ソービニオン・ブラン、リースリングなど多種多様です。日本ならではの品種としては、甲州、ナイアガラ、デラウエアなど生食用と醸造用とを兼ねている品種が多くみられます。
白ワインは「樽熟成などで重厚な香りを持つワイン」と、フレッシュでフルーティな「比較的若いうちに飲むワイン」に分かれます。ブドウの特徴はそれぞれあり、例えば、シャルドネ(Chardonnay)は、白ワインのスタンダードな品種として世界各地で栽培されるようになっており、その起源はフランス、ブルゴーニュの白ワインです。また、リースリングはアルザス地方およびドイツ全域で古くから栽培されている品種で、そのワインはユリの花のような香りを特徴とするアロマティックなものが多いことが特徴です。
日本固有の品種である甲州は、成熟するにつれて果皮が薄い紫色になり、白ワイン醸造用品種と比較してポリフェノール類を多く含みます。近年甲州を原料とするワインは、華やかな香りのワイン、柑橘系のアロマを持つワイン、シュール・リー製法のワインなど様々なスタイルが存在しています。
白ワインの製造は、原料ブドウを除梗破砕した後、直ちに圧搾(プレス)をして得られた果汁を発酵するものです。ブドウを圧搾機に入れ、圧をかけずに自然流下する果汁が本来の「フリーラン果汁」ですが、搾汁率を低くして得られた果汁を「フリーラン果汁」と呼びます。「フリーラン果汁」からはフレッシュでフルーティな香りと繊細でデリケートな味わいのワインが生成されます。また圧搾して得られた果汁は「圧搾果汁(プレス果汁)」と呼ばれ、これには種子由来のポリフェノール等の成分が含まれ、色調が濃く、渋みや苦味が強くなります。
果汁に含まれる雑味およびオフフレーバー発生の原因となる物質の除去を目的として、圧搾後の果汁に空気もしくは酸素を強制的に吹き込む「ハイパー・オキシデ―ション」があります。これは、果汁中のポリフェノール類を酸素の供給で沈殿させ、苦味、渋みなどの雑味の低減、色調の安定に寄与します。果汁は酸化、各種化学反応、微生物の増殖のリスクがあり、二酸化炭素(ドライアイス)などの不活性ガスや適正な量の亜硫酸を用いて果汁の酸化防止が重要となります。
主発酵前の果汁と果皮を一定時間浸漬する「スキンコンタクト」には、果皮に含まれる様々な香りおよび香りの前駆体等を果汁に移行させる効果があると考えられています。
発酵前の果汁に亜硫酸を添加し、低温下で1日程度静置することで果汁中の皮や種の破砕物や不純物、不溶性成分などを沈殿させて清澄化「デブルバージュ」が行われ、清澄には冷却、酵素添加による自然沈殿法や遠心分離によるセパレータの方法があります。
発酵前の果汁濁度(Nephelometric Turbidity Units:NTU)の調整は、酵母の急激な増加や品温の上昇の抑制に効果があるとされています。NTUはブドウの品種および目指すワインのスタイルによって異なり、過剰な清澄化は主発酵に必要な窒素成分不足につながり「スタック発酵」という主発酵が途中で止まってしまうような現象が起こりやすくなってしまいます。その対処法としては、主発酵開始前に果汁中の窒素成分含有量を測定し、果汁の滓区分またはリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなど窒素成分を加えて調整することが望ましいとされており、ブドウの糖度が目標とするアルコール濃度に不足する場合、日本の酒税法では糖を補うことが認められています。
また白ワインにおいては、酸味も重要となります。果汁に酸が不足の場合、糖と同様、酒税法では発酵の助成・促進することを目的として酸類の添加、酸度が高い場合には、除酸をすることも認められている。
白ワインの発酵温度は赤ワインと比べて低く、15℃から20℃で行われることが多く、果実香の保持と発酵による香気成分の生成には、低温発酵が行われます。
もろみの発酵状態を把握するためには、経時的に比重、アルコール含量を測定していきます。主発酵の開始に伴い、二酸化炭素の泡が液表面に確認できるようになり、果汁が濁るとともに発酵熱が生じるため、温度の測定も必須です。そして主発酵後期は、二酸化炭素の発生量が少なくなることからワイン表面が酸化しやすくなるため、主発酵終了の見極めも重要です。
発酵終了後、滓引きを数回行います。その際、基本的には低温下で貯蔵容器になるべく満量になるようにワインを入れていきます。ここで、不活性ガスを用いる場合もあり、酒質の安定化を目的としては、冷却あるいはベントナイト処理なども有効だと言われています。
南半球で造られたワインが7月20日に「サマーヌーボー」として発売されています。夏にぴったりの爽やかな白ワインも多く、様々なお店に並んでいます。
冷やした白ワインで、夏の夜をゆっくり過ごすのもオススメです。
<参考書籍>
山梨県ワイン酒造組合:山梨県ワイン製造マニュアル(2020年版)
戸塚昭、東篠一元ら:新ワイン学、㈱ガイアブックス、2018
社会人向け醸造家に学ぶ講座
実験ができる体験実習開催中
東京バイオでは、毎週末実験ができる体験実習を行っています。
また、週末忙しいい方のために平日説明会も開催中。
是非お越しください!