【ワインの造り方】赤ワインの製造
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ワインの原料は、皆さんご存知の通りブドウです。
日本では酒税法上、ブドウ・リンゴ・梨・イチゴなどの果実を原料にした醸造酒は果実酒であり、ワインとして表示されて販売されるが、海外ではワインの原料はブドウであり、リンゴやナシ、イチゴで造る醸造酒をワインとは呼びません。
ワインは、原料のブドウの特徴とその醸造法でその味わいが変わります。
赤ワインはブドウ果皮からの赤系色素由来の色素を特徴とします。原料となるブドウの品種には欧州系のヴィニフェラ種(Vitis vinifera)、アメリカ系のラブラスカ種(Vitis labrusca)、山ぶどう品種など多様な品種があり、ワイナリー考え方などで選択されています。原料の特徴、品質で醸造されるワインが変わるため、ワイン醸造において「原料のブドウ」は重要なものです。
ワインの品質向上のためにはブドウが新鮮で、健全であること、ワイン醸造に適した果汁成分であることが必要となります。ワイン醸造の最初のステップは「ブドウの収穫」で、適した状態のブドウを得るために収穫日を決めていきます。ブドウの満開から熟期までの期間はある程度一定であるため、収穫日をおおよそ推測することは可能です。
収穫日を決めるためには、ブドウの成熟状況を確認することが一つの要素となります。赤ワインでは、ブドウの病害虫の発生状況、房の粒の大きさ、色、離れ具合、実の甘味、酸味、果皮の厚さ、果汁の糖度、酸度などの把握とともに重要な成分であるポリフェノールの成熟が含まれます。収穫方法には「手収穫」と「機械収穫」があり、手収穫はコストがかかりますが、房の形状が保たれるなど丁寧な収穫ができることが魅力です。(しかしながら、世界的には確実に機械収穫が増加しています。)
日本では手収穫されたブドウが箱で醸造所に運搬され、選果、除梗、破砕が行われます。
除梗・破砕によりおこるブドウの酸化、ブドウに付着する野生酵母等による汚染を防ぐ目的で亜硫酸を添加します。赤ワインでは、腐敗果、未熟果、葉、梗などを除き、求める品質のワインが醸成のため、特定成分不足又は過剰に対して補糖、除酸、酵素剤、発酵促進剤の添加等を行います。酸の添加は製造の健全を期する目的で製造工程中に加えるものですが、海外で行われているような酸度の調整としての補酸は日本では酒税法上認められていません。
そして、発酵前に果醪を低温で数時間から数日間のマセラシオンを行い、アルコールのある状態でのマセラシオンを短くすることで、粗い渋味の抽出を減らし、微生物の働きによる複雑な果実香をえることができます。その後、発酵用に酵母を添加し、アルコール発酵を開始する。アルコール発酵が始まると生成された炭酸ガスが果皮や種などの固形分を押し上げて果帽を形成していきます。
果帽を長時間空気と触れることを防ぐため、この状態で液循環や櫂棒で果帽を発酵槽上部から果汁中に突き崩し(ピジャージュ パンチング・ダウン)を1日1回から3回行い、固形成分の液体成分への抽出を促すとともに汚染微生物の影響を排除、またこの間、温度・比重の測定を行い、発酵の進行状況を丁寧に把握していきます。発酵期間は発酵開始から約1週間程度となります。
アルコール発酵も終盤、発酵槽からフリーランを別容器に移し、残った果皮や種子を圧搾してプレスランを得ます。そして目指すワインに調整するために両者を混合し、残糖分を発酵、発酵終了とともに検定を行い、熟成工程に移行していきます。
ワインの酸味調整のためにはマロラクティック発酵(MLF)を行います。乳酸菌の働きでリンゴ酸が乳酸と炭酸ガスになり、減酸により酸味のバランスが整います。乳酸菌を添加しなくてもMLFは起こりますが、ダイアセチル生成などの不快臭が出る危険があるため、乳酸菌スターターを添加する場合がほとんどです。
すべての発酵が終了するとワインをタンクや樽で熟成させていきます。樽での熟成では、樽の香味やタンニンがワインに付与され、ゆっくりと酸化熟成を進めることができます。瓶詰をする前には清澄作業(コラージュ)、滓引き、ろ過、酒石酸除去などを行います。滓引きは沈んだ澱を残しながら上澄みを移し替えることで滓を除くとともにアルコール発酵やMLFで生じた炭酸ガスが抜け、酸素が吸収されます。滓下げはタンパク質や鉱物を添加し、ワイン成分を吸着させて滓として除去する清澄作業です。ろ過のみのものよりも滓下げ、滓引きを行って育成したワインは、清澄度が維持されます。
現在は、添加物においても醸造工程においても様々な知見が得られ、目指すワインつくりにもアプローチの方法が選択できるようになってきています。
今、どんな赤ワインがおいしいですか?それは、どんな造りをしたワインですか?
<参考書籍>
山梨県ワイン酒造組合:山梨県ワイン製造マニュアル(2020年版)
戸塚昭、東篠一元ら:新ワイン学、㈱ガイアブックス、2018
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