ビールの香りと風味について
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ビールの原料に由来する香り・風味は、フェノール化合物との関連性があると言われています。
ビールは、様々な風味と香りの化合物を含む飲料で、造り手は風味・香り・味わいのバランスがよいものを目指し、醸造を行っています。
成分中のフェノール化合物は、麦芽の粉砕と醸造の過程で穀物とホップから抽出され、完成したビールには常に存在しています。これらの化合物のなかには、ビールにほとんど影響を与えないものもあるが、望ましい効果を示すもの、望ましくない効果に働くもが存在します。また、ビールの安定性にも寄与しています。
ビールに含まれる揮発性フェノールは、主に麦芽やホップなどの植物材料に由来し、そのほとんどは醸造過程で原料から抽出されるものです。
フェノール化合物は、植物細胞壁の成分、フェルラ酸、p-クマリン酸、シナピン酸は、ヒドロキシ桂皮酸 (HCA) であり、ヒドロキシル シナミルアルコール誘導体に変換されます。麦汁とビールに最も多いHCAはp-クマル酸とフェルラ酸で、完成したビールの主な揮発性フェノールは、4-ビニルグアイアコールと 4-エチルグアイアコール (フェルラ酸由来)、および 4-ビニルフェノールと 4-エチルフェノール (p-クマル酸由来)となっています。
ほとんどのビールで、フェノールの性質は欠陥と繋がっています。欠陥に繋がるフェノールの特徴としては、強烈な風味(フローブなど)のレベルから、不快な薬やプラスチックストリップのようなもの、ヤギやクレオソートのようなものまで様々であり、その一部は酵母の選択や発酵温度が原因となります。
不快なフェノールの影響が出たビールでは、揮発性フェノールの発生原因が腐敗菌による汚染の可能性が高く、ビールの腐敗菌の多くが、乳酸菌、酢酸菌、Saccharomycesの野生酵母、非Saccharomycesのいずれかに分類されます。例えば、乳酸菌の乳酸発酵による麦汁やb-ルの酸性化による腐敗が知られており、またジアセチル生成をする乳酸菌の存在も問題となります。さらに、野生酵母や醸造所を汚染する酵母もその代謝の特徴からバーンヤードやクレオソートの特徴と関連します。
フェノール化合物は、熟成または不適切な保管によるビールの劣化の潜在的な一因であることが報告されており、熟成したビールは「古いビール」の特徴として4-ビニルシリンゴールの獲得が挙げられます。これは熟成中のシナピン酸配糖体の分解によると考えられています。長期保管は、4-ビニルグアイアコール由来の「スパイス」の香りと風味を持つビールは、4-VGがバニリンに分解することで特徴が失われ、より甘い味に変わる可能性が示唆されています。
ビールにおけるフェノール化合物は、麦芽のマッシングと醸造の過程で麦汁中に出て、これがビールに残るものです。ここで造り手は、出来上がったビールへのフェノール化合物に由来する香り、風味への影響を調整することができます。
風味などを強くするためには、マッシングと麦汁の煮沸方法の選択、原料と酵母の選択で効果が得られます。フェノール特性の影響を減らすことは、醸造プロセスの選択、適切な衛生管理と適切な保管と熟成で望ましくない微生物を回避することによりに達成できると言われています。
文献を通してビールを見てみると、醸造に関する研究が広く行われていることがよく分かります。
これからのビール醸造の変化も楽しみになってきますね。
<参考文献等>
・Michael lentz : The Impact of Simple Phenolic Compounds on Beer Aroma and Flavor, Fermentation, 4, 20, 2018
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