【ビールの造り方】発酵~下面発酵~
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ビール醸造の発酵には
・上面発酵
・下面発酵
・自然発酵
の3つがあります。
今回はこのうち「下面発酵」について、
解説していきたいと思います。
「下面発酵酵母」は、10℃以下の低い温度で発酵し、
発酵後期にタンクのそこに沈むという特徴があると言われています。
下面発酵ビールはラガータイプのビールにあるようにバランスよく穏やかで、爽快で、スッキリとした味わい呈する傾向があり、上面発酵酵母・下面発酵酵母ともに菌株としては多様であり、ねらった香味のビールを造るための酵母はそれぞれ選定する必要がある。
下面発酵酵母は、上面発酵酵母の優良株を選抜する際に得られ、胞子形成能が低く、低温で発酵するため、上面発酵酵母よりも発酵期間が長くなります。
また上面発酵酵母はSaccharomyces cerevisiae、下面発酵酵母はSaccharomyces pastorianusに分類されています。
The Yeast(1998)によるとビール酵母はSaccharomyces pastorianus に分類されるのが適しているとされています。これは、S. pastorianusのヌクレオシド配列がS. bayanusとS. cerevisiaeと相同性が高く、ビール酵母のヌクレオシド配列もS. bayanusとS. cerevisiaeと相同性が高かったことが根拠となっています。
サザンハイブリダイゼーションにより、S. cerevisiae由来の塩基配列とS. bayanus由来の塩基配列がS. pastorianusの染色体中にあり、S. pastorianusがハイブリッド体であると考えられており、S. bayanusにはS. cerevisiae由来の染色体があり、S. carlsbergensisにはS. bayanusとS. cerevisiae由来の染色体があるという報告もされています。
2011年にSaccharomyces eubayanusが発見され、その全ゲノム配列の解析によりS. pastorianusはS.eubayanusとS. cerevisiaeとの融合体であるという説に落ち着いているようです。(S.eubayanusは、中国の奥地からも分離されている。)
下面発酵酵母の発酵後期に酵母が凝集してタンク内で沈むという特徴は、沈降した酵母を回収して次のビール醸造に用いられ、効率的なビール醸造を可能にしています。
下面発酵酵母によるビール醸造は上面発酵ビールよりもその開始は新しいものであり、酵母の繰り返し利用、低温発酵による雑菌による汚染抑制など製造上、有利な点が多く、ラガータイプのビールが世界の主流になっています。
ヨーロッパにはなかったS.eubayanusがS. cerevisiaeと出会いS. pastorianusの原型が現れ、下面発酵酵母がビール醸造に使用され、酵母が選抜される中で進化をして今日に至ったとされています。
「下面発酵酵母」については、遺伝子、タンパク質、代謝、細胞などからのアプローチにより酵母の特性、醸造特性の理由が明らかになってきています。
これからも進化した下面発酵酵母の新情報が出てくることが“微生物好き”にもたまらない楽しみとなっています。
ビールを飲みながら、酵母に乾杯!!
参考文献等)
・渡 淳二:カラー版 ビールの科学 麦芽とホップの生み出す「旨さ」の秘密, 講談社, 2018年
・善本裕之, 吉田聡, 金井桂子, 小林統:美味しさのカギを握るビール酵母の魅力を探る 下面発酵酵母の解析から見えてきたもの, 化学と生物, 56, 605, 2018
・大室繭:ビールつくりの主役:ビール酵母の特徴と発酵力の鍵 ビール酵母の発酵力に寄与する因子の解明, 化学と生物, 58, 157, 2018
・有村治彦:ビール酵母, 日本醸造協会誌, 95, 791, 2000
・善本裕之, 吉田聡, 稲留弘乃:ビール類製造における酵母の栄養源飢餓ストレスと発酵制御, 生物工学, 98, 163, 2020
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