【徹底解説】ビールの泡について

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冷えたビールのおいしい季節になってきました!

今回は「ビールの泡」について、
少しアカデミックに解説していきたいと思います。

 

日本におけるビールの泡に関する研究は、
主に泡がいかに長持ちするかにフォーカスされて行われてきました。

ビールの泡の構成因子は、
大麦由来のタンパク質・ホップの苦味成分・ビール中の炭酸ガス

上記などがあり、脂肪酸・脂質・酵母から排出されるタンパク質分解酵素が阻害物質となります。

ビールの泡の質の評価については、
「泡立ち」「泡持ち」「泡のきめ」「付着性」等があるそうだが、
多くの研究は「泡持ち」に着目した研究が多くされています。

 

東京バイオでも過去に、
麦汁の高級脂肪酸生成を抑制して「ビールの泡持ちを良くするための研究」を進めていました。

蛸井のビールの泡に関する文献によると、
ビールの泡は英語ではfoamと表現され、すぐにはじける泡ではなく、さらに泡持ちの研究はfoamをより長持ちさせることが目的となると記述されています。

 

ビールの泡ができて壊れるのは物理現象であるが、
泡の安定性にはビールの成分の性質が関与しており、
「ビールの泡」には物理的な面と化学的な面が相互に関係しています。

大麦麦芽由来のタンパク質のうち醸造工程等で残ったものがビールの起泡性に寄与し、中でも疎水性の高いタンパク質が「泡持ち」への寄与率が高いとされています。
酵母由来のタンパク質にも「泡持ち」に寄与する可能性があると報告があるようです。

一方、ホップなしで醸造すると泡持ちが格段に落ちるといわれています。
これは、ホップの苦味成分(イソフムロン(イソα酸)に由来する泡の液膜中でタンパク質同士を架橋する成分がないことに起因ようであり、そしてビール中のデンプンに由来するデキストリン、大麦麦芽の細胞壁成分も起泡性や膜の安定性に関与すると考えられています。

 

サーバーで注ぐ生ビールは、細かいクリーミーな泡と樽生ビールの新鮮さでおいしいですが、このサーバーの注ぎ口部分には、主に液を注ぐカランとビールを通過させて細かい泡を注ぎだす泡付けカランがあり、この構造は日本だけです!つまり、こだわりの「泡」なのです。

 

ビールの泡がない方がよいと考える人もいます。
以前「ビールを注ぐ際、できるだけ泡を立てない」し、そもそもビールに泡はない方がよいと話される方とお会いしたことがあります。

「ビール 泡」とキーワード検索するとたくさんの文献が出てきます。
「ビールと泡のおいしいの関係」は、たくさんの学術的研究がされているテーマで「きめが細かく持ちの良い泡のビール」から「泡のないビール」まで、「泡」だけでも様々な研究成果があります。

さてさて皆さんは「ビールの泡」にどんなこだわりがありますか?

 

参考文献等)
・中村 剛:ビール泡品質向上への一貫した取組み, 生物と生物, 54, 212, 2016
・東京バイオテクノロジー専門学校卒業研究要旨:ビールの泡持ち向上工場技術の開発, 2018
・蛸井 潔:ビールの泡―基礎研究から応用開発まで―, 日本醸造協会誌, 111, 185, 2016
・鈴木 渉:ビールの泡―生まれてから消えるまでー, 日本醸造協会誌, 91, 8, 1996
・熊田順一:ビールの泡, 生物と化学, 13, 504, 1975

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