サワービールとは?

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皆さん、サワービールをご存知ですか?

 

 「サワービール」とは、その名の通り「酸っぱい」ビールです。

サワービールの酸は、乳酸菌由来の乳酸であったり、フルーツ由来の酸ですが、「酸っぱい」といえば、前回のブログで解説したランビックの酸は乳酸菌由来のものでした。

一般的にサワービールは乳酸菌による乳酸発酵後に煮沸し、Saccharomyces cerevisiaeを添加してアルコール発酵をするケトルサワーリング法が用いられています。
そのサワービール製造に乳酸菌を使わず、ワンステップでの製造の可能性を示唆したのが、non-Saccharomyces で乳酸の生成能が高い酵母、Lachanceaの菌株です。

この菌株は香り豊かなワイン醸造でも利用された報告があるもので、麦芽糖とマルトトリオースの資化、グリセロールと乳酸の生成、発酵中の pH の変化などの調査において、ビール醸造適性の可能性が示唆され、さらにピッチングレート(麦汁の量に対し、発酵タンクに加える酵母の細胞数)、泡の安定性、ホップ耐性、vicinal diketone(ビール中のオフフレーバーであるダイアセチルと2,3-ペンタンジオン)生成、酸素要求性、凝集が調べられ、ワンステップでサワービール製造をする選択肢として2016年にその報告がされています。

以降、Lachancea菌株でのビール醸造の様々な報告がされています。
例えば、Lachancea thermotoleransSaccharomyces cerevisiaeの混合発酵によりサワービールの醸造を行い、乳酸が1.5~1.8g/L、pH3.3程度の添加物を加えずとも、ソフトな酸味の新しいフルーティなサワービールとなったものもその一つ。2種の酵母の発酵で多くの香味物質が生成され、多量の酢酸イソブチルと酢酸イソアミルによるフルーツの香り高い、さわやかな味わいのサワービールとなったとの報告もあり、これはサワービールを大量生産にも繋がるとされています。

日本では地域活性化の一つとして、鳥取県におけるLachancea菌株を植物などから分離、サワービール(クラフトビール)製造に利用しているという報告などがあります。
アルコール発酵と同時に酸を大量に作るnon- Saccharomycesを使ったビールだけでなく、近年はサワービールが流行しています。

 

<参考文献>
・https://brewing-japan.com/news/trend/sourbeersusa/
P. DomizioJ. F. HouseC. M. L. JosephL. F. BissonC. W. BamforthLachancea thermotolerans as an alternative yeast for the production of beer, J Inst Brew , 122, 599, 2016 
・Xiaofen Fu , Liyun Guo, Yumeng Li , Xinyu Chen, Yumei Song and Shizhong Li:Transcriptional Analysis of Mixed-Culture Fermentation of Lachancea thermotolerans and Saccharomyces cerevisiae for Natural Fruity Sour Beer, Fermentation, 10, 180, 2024
・児玉基一朗:ローカル酵母でオンリーワンのクラフトビールを, 産学官連携ジャーナル,

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