ゲノム編集でトラフグが2倍速で育つ!価格低下で手軽に食べれる日も近いかも

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先日、こんなニュースがありました。

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「てっちり」や「てっさ」などのふぐ料理に使われる高級魚、「トラフグ」は、最近では外国人観光客からも人気ですが、「ゲノム編集」と呼ばれる生命の遺伝情報を自在に書き換えられる技術を使って、通常の2倍のスピードで成長する「トラフグ」を作り出すことに京都大学などのグループが成功しました。養殖だと2年かかるところを1年ほどで出荷できる状態になるということで、グループでは、「高級魚のトラフグを、短期間に育てられるようになれば、価格も下がり、もっと多くの人に手軽に食べてもらえるようになる」と話しています。

京都大学の木下政人助教と、水産研究・教育機構のグループは、生命の設計図にあたる遺伝情報を自在に書き換えられる「ゲノム編集」と呼ばれる技術を使って、トラフグの受精卵に含まれる遺伝子を操作しました。

まず、筋肉の成長を抑えている「ミオスタチン」という遺伝子を操作し、働かなくしたところ、ふぐの身の部分が、通常の1.4倍ほどある肉付きのよいトラフグを作り出すことができたということです。
続いて、ふぐの食欲を抑えている遺伝子を操作し、働かなくしたところ、エサを食べる量が増え、骨の成長や体重が増えるスピードがあがって通常の2倍のスピードで成長するようになったということです。

その結果、通常だと養殖して市場に出荷するまで2年ほど必要ですが、1年ほどで出荷できるまでに成長したということです。こうした技術を使えば、生産コストの大幅な削減が可能で、グループでは、今後、さらに多くのトラフグで実験を重ね、技術を確立したいとしています。
そのうえで、ゲノム編集をしたトラフグの食品としての安全性も確認し、数年後には、実用化に向けて量産できる体制を整えたいとしています。

木下助教は、「トラフグは高級魚だが、ゲノム編集の技術を使って肉づきのいいトラフグや、成長スピードの速いトラフグを量産できるようになれば、価格が下がり、多くの人にもっと手軽に食べてもらえるようになる」と話しています。

注目の技術「ゲノム編集」とは

「ゲノム編集」は、生命の設計図にあたる遺伝情報を自在に書き換えられる画期的な技術で将来、ノーベル賞を受賞する可能性もあると注目されています。
魚や野菜の品種改良では、目的の遺伝子の変化が偶然起きるまで何千回、何万回と試験を繰り返すことが必要で、長い時間と手間がかかります。
しかし、ゲノム編集では、遺伝子の特定の場所の配列を狙いどおりに取り除いたり、新たな配列を組み入れたりして遺伝情報を書き換えることができるようになりました。
特に、4年前に開発された「クリスパー・キャス法」と呼ばれる方法は、低コストでより簡単に狙った遺伝子を操作することが可能となり、この方法を使って、アレルギーの原因となる遺伝子を持たないニワトリの卵や、発芽せず、毒のないジャガイモなどの研究が進められています。
また、医療の分野では、ゲノム編集の技術を使って、ヒトの病気のメカニズムや治療法を解明するための実験動物が作られているほか、アメリカでは、エイズの治療にも応用できないか研究が進められています。

着目したのは肥満の人の遺伝子

通常の2倍のスピードで成長するトラフグを作り出す研究で、京都大学などのグループが注目したのは、肥満の人の遺伝子でした。
日本肥満学会の常務理事で、自治医科大学の矢田俊彦教授によりますと、肥満の人のおよそ1%は生まれつき食欲を抑える遺伝子に異常があると言われていて、通常よりも多く食事を取ったり、体の成長を促すインスリンが成長期に多く分泌されたりするために、体重が急激に増え、身長の伸びるスピードも速いということです。
京都大学などのグループは、トラフグでもこの食欲を抑える遺伝子をゲノム編集の技術で働かなくさせれば、同じような現象が起きるのではないかとして研究を始めました。

出荷に審査不要か 農水省「他省庁と協議したい」

農林水産省によりますと、従来の遺伝子組換え技術で作った「遺伝子組換え生物」は、食品としての安全性を確かめる「食品衛生法」と、野生生物や自然環境への影響を確かめる「カルタヘナ法」で、国の定める基準や審査を満たした場合、市場への出荷が認められています。
しかし、外部から遺伝子の一部を生物に導入する遺伝子組換え技術とは異なり、今回のゲノム編集によるトラフグは、体内にある遺伝子を働かなくさせただけなので、これらの法律の規制対象になるかどうかはまだ決まっていないということです。
ゲノム編集を使った研究は、急速な進展を見せていて、農林水産省は、法律を所管する厚生労働省や環境省と、今後、対応を協議したいとしています。

 

フグ好きの私にとっては期待のニュースです

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