食品廃棄物を利用した食品材料開発ー廃棄物から糖蜜を作るー

コース 食品開発コース

目次

要旨.. 1

1  序論.. 3

1)  はじめに.. 3

2)     食品廃棄物とその化学組成.. 3

3)  グルコース利用の現状と可能性.. 4

4)  本研究の目的.. 6

2  食品関連廃棄物から糖蜜液の生成.. 11

1)  概要及び目的.. 11

2)  方法.. 11

(1)  試料.. 11

(2)  試薬.. 11

(3)  器具.. 12

(4)  装置.. 12

(5)  操作.. 12

3)  結果と考察.. 14

(1)  食品関連廃棄物のグルコース生成量の比較.. 14

4)  まとめ.. 15

3  リグニン除去による糖蜜中のグルコース生成量の向上.. 20

1)  目的.. 20

2)  方法.. 20

(1)   材料.. 20

(2)   器具・装置.. 20

(3)   試薬.. 21

(4)   操作.. 21

3)  結果と考察.. 23

(1)   割り箸のリグニン除去.. 23

(2)   リグニン除去による糖蜜液の糖濃度の変化.. 23

(3)   糖蜜液の大量調製および官能試験.. 23

4)  まとめ.. 24

4  総括.. 32

5  参考文献.. 33

6  謝辞.. 34

要旨

日本の食品廃棄量は年間約1800万トンにも及び、食品輸入国であるとともに廃棄物大国でもあるといえる。食品廃棄物はほとんどが焼却され有効利用されていない上に最も多く含まれる成分はセルロースと考えられるが、難分解性であるため、有効利用が難しいとされている。セルロースは、グルコースが直鎖状にb-1,4結合したポリマーであることから、加水分解によりグルコースを生成することが可能である。セルロースからグルコースを作成する方法としてはセルラーゼ(加水分解酵素)を用いる方法と酸を用いた加水分解法に大別される。セルラーゼを用いる方法はセルロースとセルラーゼを室温で水溶液として混合することで反応を進行させられることからエネルギーコストが安価となり生成したグルコースを取り出す後処理も容易と言われている。一方酸(=硫酸)を用いる方法は触媒として使用した硫酸を除き再利用することが最大の課題であったが、最近各種の陽イオン交換膜が開発され太陽光発電による電力と併用することで解決方向にあるといえる。グルコースは食品産業では甘味料、エネルギー産業では燃料電池の燃料、そのほか動物の飼料や医療用の点滴に含まれる栄養(エネルギー)成分等様々な用途が考えられる。そこで、本研究では材料として食品廃棄物および外食産業で大量に廃棄される割り箸に注目して、これらに含まれるセルロースから化学法を用いてグルコースを含む糖蜜を作製することを目的とした。

1章では廃棄物の現状や組成、グルコースの用途等について現時点で明らかになっている情報を整理するとともに本研究の概要や目的について述べた。

2章では、食品廃棄物(トウモロコシの芯および皮、パイナップルの芯および皮、キウイフルーツの皮、バナナの皮)および割り箸を試料として、72%硫酸を用いて加水分解を行い生成したグルコースを含む溶液から硫酸バリウムを沈殿させることで大量の硫酸を除去し中性のグルコースを含む糖蜜液の調製および廃棄物間の比較を行った。精製したグルコースは還元性の単糖に選択性のあるトーブラー・クライナー法により定量した。硫酸除去に硫酸バリウム法を用いた理由は実験室で容易に実施可能である点およびイオン交換膜が入手しづらいためである。その結果、トウモロコシ等の食品廃棄物ではほぼ同じで約5%であったが、割り箸では7%程度グルコースが生成することを明らかとした。

3章では、2章で最もグルコース生成量が高かった割り箸のリグニン除去処理、除去試料から糖蜜液の調製および分析、糖蜜液の大量調製および官能試験を行った。リグニン除去は、部分的に加水分解したリグニンが酢酸に溶解することを利用した。すなわち触媒量の硫酸を含む氷酢酸で試料を乾留することでリグニンを溶解し残渣をリグニン除去試料とした。この操作により約40%のリグニン除去割り箸が得られた。また、グルコース以外の糖の存在を確認するためにフェノール硫酸法による全糖量も測定した。その結果、リグニン除去することで約3倍(22%)のグルコースが生成し、糖蜜液中の全糖はグルコース量の2~3倍存在する(リグニン除去割り箸では47%)ことが明らかとなり、糖蜜液中にはグルコース以外の糖が大量に含まれることが明らかとなった。これらのグルコース以外の糖については、セルロース由来であることからセロビオースやセロトリオースではないかと推定している。最後に糖蜜の大量調製および官能試験により甘さの確認を行った結果、調製した糖蜜液はわずかに甘みを感じるが極めて苦いことが明らかとなった。この理由としてはリグニン由来の苦味物質が十分に除去されなかったためと考えており、食用としてはさらに精製が必要である。

以上より食品5班は食品廃棄物及び割り箸から工業的に有用な基本材料であるグルコースを、硫酸を用いた化学法により調製する研究を行い、硫酸バリウム法により硫酸を除去することでグルコースを生成させるという目標を達成した。しかし精製したグルコースは食用としては苦味が強いことからさらなる精製が必要なことが明らかとなった。

1章   序論

1)   はじめに

食品は一部の鉱物資源を除き、植物または動物が生産するバイオマスである。さらに動物由来のバイオマスは元を正せば動物が植物を餌としたものであることから、すべてのバイオマスは植物由来といえる。一方、植物の生産するバイオマスは、NASAの試算1)によれば地球内部の核融合に由来する火山エネルギー(全体の0.025%程度と見積られる)を除き、太陽エネルギーに由来する。地球のエネルギー収支はNASAの見積もり通り圧倒的に太陽エネルギー(99.97%)が占める。蛇足であるが、太陽エネルギーは太陽での核融合に由来することから、我々の利用しているエネルギーはすべて核エネルギーに由来しているといえ、核エネルギーは人工ではなく自然エネルギーである。

植物のエネルギー同化は、一部を除きほとんどが空気中の炭酸ガスと太陽エネルギーからグルコースを合成することで行われ、グルコースからさらに様々な炭水化物が合成される。植物が1年間で生産するバイオマスである炭水化物は年間50億トンと推定され、このうち25%が耕地で生産され残りは森林である2)。耕地で生産される12.5億トンのうち、可食部が5億トン、非可食部が7.5億トンで非可食部の一部が肥料として利用されるが、ほとんどは焼却されているのが現状である。非可食部はセルロースを主成分としその他ヘミセルロース及びリグニンを含む。この大量の炭水化物資源の一部を加水分解してグルコースやキシロースを取り出し、食糧・工業原料あるいはアルコール等のエネルギー源として有効利用が可能となれば、人類に多大な利益をもたらすことが確実である。言い換えれば耕地で生産される非可食部は、未利用で長期保存性のある莫大な炭水化物資源といえる2)

2)  食品廃棄物とその化学組成

可食部に目を向けると、売れ残りや食べ残し、さらに生産過程で大量に発生した廃棄物に対して、抑制や減量化の努力を義務付け、飼料や肥料として再生利用することを目的に、食品関連事業者を対象とした「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(通称「食品リサイクル法」)が平成13年5月に施行されている。すでに15 年が経過しており、廃棄物等の発生量は、製造、流通、外食での様々な努力により年々減少している(図2-1)3)。が、現状は未だに多量の食品廃棄物等が排出されている。これに加えて、技術問題ではないが、我が国の食品流通には「3分の1ルール」という商習慣がある。これは賞味期限の初めの1/3がメーカーから小売店への納入期限、次の1/3が小売店から消費者への販売期限、最後の1/3が消費者の正味の消費期限としているもので、賞味期限内でも返品の対象となるルールであることから、大量の廃棄物を生む大きな原因の一つと言われている。これについては蛇足であるが、現状の賞味期限表示を製造年月日表示に変更し、自己責任中心の消費意識に再修正していくべきと考える。

食品関連の代表的な廃棄物である木くず(割り箸等を含む)、コーヒー滓、もみ殻、みかんの皮、おからに含まれる成分を図2-2に示す4)。この図からわかるように、廃棄物はセルロース、リグニン、へミセルロース、デンプンなどで構成され、以下に示すようにデンプン以外はどれも難分解性の物質であることが理解できる。

セルロースは、グルコースが直鎖状にb-1,4結合したポリマーであり(図2-3)、微生物の生産するセルラーゼや濃硫酸を用いなければ分解が困難な安定な物質である。植物細胞の細胞壁および植物繊維の主成分で、天然の植物資源の1/3を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物である。繊維素とも呼ばれる。自然状態においてはヘミセルロースやリグニンと結合して存在するが、綿はそのほとんどがセルロースである。セルロースはすべてグルコースが直鎖上に重合した構造であるため加水分解することでグルコースを得ることが可能である。

リグニンはフェニルプロパノイドが複雑に重合した物質で、高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物の総称である。代表的な構造を図2-4に示す。木材中の20–30%を占めており、高等植物では生育に伴い、道管・仮道管・繊維などの組織でリグニンが生産される。3種のプロピルベンゼン化合物(p-クマリルアルコール、コニフェニルアルコール、シナピルアルコール)を最小単位とする網状高分子化合物で、主として中間層や細胞壁にセルロース,ヘミセルロースと結合して存在し植物構造の強化に役立っていると考えられる。

ヘミセルロースはグルコースのほかに、キシロースやマンノースが複雑に重合したポリマーで、セルロースが直鎖構造である点と異なり、ヘミセルロースは枝を持つ多糖類である。一般にはヘミセルロースは植物細胞壁に含まれ、セルロース以外の水に不溶な多糖類の総称である。植物の細胞壁でリグニンやセルロースと共に複合体を形成しており、その存在比は植物によって異なるがおおよそ30%前後である。

3)   グルコース利用の現状と可能性

すでに述べたように、食品廃棄物に含まれる成分で最も大量に含まれる物質はセルロースである。セルロースは、グルコースのみでできているポリマーであるため、工業的に有用なグルコースの原料としても期待できるが、難分解性であることが課題である。セルロースのモノマーであるグルコース(ブドウ糖)は、ハチミツや果物に含まれる六単糖である。グルコースのもう一つの代表的なポリマーであるデンプン(a-1,4結合)や、工業的に有用な二糖であるショ糖を加水分解してもグルコースが生成する。グルコースの生理的な役割は、脳、筋肉や臓器などのエネルギーとなり、特に脳のエネルギーとして重要な役割を果たしている。さらに、肝臓や筋肉にグリコーゲン(デンプンと類似のa-1,4結合の主鎖にa-1,6結合の枝鎖を持つ)という形で蓄えられ、生体がグルコースを必要とした場合、非還元末端から速やかに切り出されグルコースが供給される。グルコースの工業用途としては、甘味料やエネルギー補給などの食品、点滴などの医薬品、家畜向けの飼料、エネルギー源として燃料電池等である。しかし食品としてはその甘さがショ糖の約40%と弱い点が課題であった。これを改良する工業的な方法として、デンプン由来の安価なグルコースを、異性化酵素であるイソメラーゼを用いてグルコースの約半量を果糖に異性化することで、ショ糖と同程度の甘味を示す商品である異性化糖 (表示は多い方を先に、果糖ブドウ糖液糖またはブドウ糖果糖液糖と記載) が開発され飲料等に大量に使用されている。デンプン由来のグルコースは100-200円/kgと安価であるが、グルコースを原料にエタノール等を合成ないしバイオ技術を用いて変換する場合、価格・供給量ともに不十分である。近い将来、グルコースないしグルコース由来のエタノールを燃料としたスマートフォンやゲーム機等の携帯機器の長時間連続稼働を可能とするためには安価なグルコースの大量供給が極めて重要である。

セルロースからグルコースを含む糖蜜液の調製法としては微生物の生産するセルラーゼを用いる方法と硫酸を用いる方法に大別される。エネルギー的にはセルラーゼを用いる方法がはるかに有利であり数種類のセルラーゼが市販されており、例えば、ヤクルト薬品工業株式会社の商品名セルラーゼ”オノズカ”3Sやセルラーゼ Y-NC、エイチビィアイ株式会社の商品名“セルロシンAC40”や“セルロシン AL8”などがある。現在も酵素のスクリーニングや遺伝子工学的な改良が検討されている。しかし、工業的に利用するためには反応速度および収率、基質であるセルロースを含む材料の品質への依存、酵素コストが割高となる等の課題もあり現状で技術確立しているとは言い難い。一方、硫酸を用いる方法は、我が国で戦前および戦時中に食料資源確保の目的で盛んに検討され、技術的には大別すると、濃硫酸を用いる方法と希硫酸を用いる方法に分類される。前者はセルロースを含む原料がほとんど濃硫酸に溶解することから均一系の反応であるため高収率が期待できるが、大量の硫酸を安価かつ効率的に除去し再利用する技術確立が課題となる。後者は原料が希硫酸に溶解しないことから不均一系であり、高温(100-200℃程度)での加熱が必要という特徴がある。いずれの方法も一長一短があるが、今回我々は材料である食品関連の廃棄物の比較検討ということで、室温で反応可能でかつ高価なセルラーゼ等の試薬を不要とする濃硫酸を用いる方法を選択した。また、硫酸の除去は参考文献に記載のある硫酸バリウム沈殿法5)により行うこととした。

4)   本研究の目的

食品5班は食品廃棄物に含まれるセルロースを原料に化学法により糖蜜液を作製する技術の確認および好適な廃棄物の選定を目的とし、次の二つの実験を行う。1)セルロース及びセルロースを含む食品廃棄物から硫酸を用いて加水分解する。加水分解した試料中の硫酸は、水酸化バリウムを添加し硫酸バリウムを生成させたのち、ろ液を得ることで、糖蜜液を調製する。得られた糖蜜液はグルコース濃度を定量することで、原料である廃棄物の違いにより生成するグルコース量を比較、検討する。2)廃棄物資源に広く含まれるリグニンは糖蜜液のグルコース生成量を低下させるとともに風味等の品質に悪影響が予想される。そこで、最もグルコース生成が良好な廃棄物材料を試料として、触媒量の硫酸を含む酢酸による乾留を行うことでリグニンを部分分解し酢酸可用性とすることでリグニンの除去を行い、得られた糖蜜液のグルコース濃度および品質を評価する。

2章   食品関連廃棄物から糖蜜液の生成

1)   概要及び目的

すでに述べたように食品関連の廃棄物に最も多く含まれる成分はセルロースと考えられる。そこで本章では、セルロース及びセルロースを含む食品廃棄物から硫酸を用いて加水分解する。加水分解した試料中の硫酸は、水酸化バリウムを添加し硫酸バリウムを生成させたのち、ろ液を得ることで、糖蜜液を調製する。得られた糖蜜液はグルコース濃度を定量することで、原料である廃棄物の違いにより生成するグルコース量を比較・検討することを本研究の目的とした。

2)   方法

(1) 試料

  • 精製セルロース(試薬)
  • 割り箸(市販品)
  • バナナの皮(購入)
  • キウイの皮(購入)
  • パイナップルの芯及び皮(購入)
  • トウモロコシの芯(購入)

(2) 試薬

(a) 購入試薬

  • 硫酸
  • 氷酢酸
  • 水酸化バリウム(8水塩)
  • グルコース
  • アセトン
  • 酢酸銅
  • 乳酸
  • モリブデン酸ナトリウム
  • リン酸
  • フェノール
  • ろ紙5C(φ125mm)
  • PH試験紙(BCP)

(b) 調製試薬

  • 銅試薬

熱水450mlに酢酸銅を24.0g加え溶解し8.5%乳酸を25ml加え500mlにメスアップした

  • モリブデン試薬

熱水100mlにモリブデン酸ナトリウムを40.0g加え溶解し85%リン酸を60ml加え200mlにメスアップした

  • グルコース標準液

ブドウ糖1.0gを100mlにメスアップした

  • フェノール試薬

水180mlにフェノール10.0gを加え溶解し200mlにメスアップし、褐色ビンに保存した

(3) 器具

  • 500ml容コニカルビーカー
  • パスツールピペット
  • メスピペット
  • 駒込ピペット

(4) 装置

  • 分光光度計
  • ドラフト

(5) 操作

(a) 試料の調製

  • 割り箸;市販の割り箸をカッター又は鉛筆削りで粉砕した。
  • 食品廃棄物;市販品を購入し、皮、芯を採取し凍結乾燥後、粉砕した。

(b) 硫酸を用いた加水分解

菅原らの方法5)を参考に次のように行った。図3-1に示したように、水3mlを500mlの三角フラスコに入れ、98%硫酸14.7gを水冷しながら加え、室温まで冷却した。冷却後に試料(セルロース)1.0gを加え攪拌溶解した。攪拌して試料を溶解させながら24時間放置した。蒸留水160mlを発熱に気をつけながらゆっくり加えた。

(c) 加水分解試料から硫酸の除去

分解液に水160mlを入れ、水酸化バリウムを加え中和処理をした。その後ろ過を行い、硫酸を除去した。

(d) トーブラー・クライナー(Tauber Kleiner)法によるグルコースの定量6)

実験操作を図3-2に示した。試験管に適当に希釈した糖蜜液を1mlとり、銅試薬を1ml加えた。これを8分間煮沸し、冷却後モリブデン試薬を1ml加え800nmの吸光度を測定した。検量線は、下記に示したように糖蜜液をグルコース(標準液を20倍希釈して使用)に変えて作成した。

3)   結果と考察

(1) 食品関連廃棄物のグルコース生成量の比較

図3-4が示したように、とうもろこしが5.8%、パイナップルが5.9%、キウイが5.8%、バナナが6.1%と比較的近い数値となっており、割り箸が7.4%であり試験した試料の中で最も生成量が多い結果となった。しかし、含有するセルロース量は図2-2から推定されるセルロース量(0.2~0.3gグルコース/g試料)と比べると未分解のセルロースが70-80%残っていると考えられる。この未分解のセルロースが大量に残存する理由の一つとして、難分解性の不純物を含んでいる可能性を考えた。難分解性の不純物としてはすでに1章で述べたようにリグニンおよびヘミセルロースが有力である。ヘミセルロースは化学的に複雑な構造で選択的に除去する方法が確立していないことから、次章ではリグニンを除去することを試みた。具体的には、部分分解したリグニンは酢酸やギ酸に溶解することが知られていることから、希硫酸共存下で氷酢酸を用いて試料を乾留することでリグニンを除去し、残存したセルロース画分の加水分解を行うこととした。

そのほか実験を進める中でいくつか気の付いた点を記載する。

  • 今回はPH試験紙を用いたが、固形分が多く終点が分かりにくかったので、PHメーターを用いた方が効率良く実験できると考えられる。
  • 中和の作業の際、硫酸を大量に使ったため手に付着してりして大変だったので耐酸性の手袋を用意して実験の安全性を高めたい。
  • トーブラー・クライナー法は手間と時間がかかり、原因は分からないが安定した結果がなかなか出なかった。

4)   まとめ

食品廃棄物4種および割り箸から調製した糖蜜液に含まれるグルコースの分析を行い、加水分解及び硫酸除去を行った結果、割り箸が8%程度で最もグルコース生成量が高かった。

この結果から次章で実施するリグニン除去は割り箸を使用することにした。

3章   リグニン除去による糖蜜中のグルコース生成量の向上

1)   目的

3章では、72%硫酸を用いてさまざまな食品廃棄物及び割り箸の分解を行いうことで糖蜜液を調製し、各種廃棄物間の比較を行った結果、割り箸が最もグルコース生成量が高いことを見出した。すなわち、割り箸では7%グルコースが生成し、実験に用いた廃棄物の中で最も効率的に硫酸で分解され、グルコースが生成した。本章では、割り箸をさらに効率的に分解させるために、割り箸に含まれるリグニンを除いた残渣(割り箸に含まれるセルロースが濃縮すると推定)を調製し、この濃縮セルロースを原料とし、72%硫酸を用いて加水分解することで、さらに高濃度のグルコースを含む糖蜜液の調製を目的とした。なお、割り箸からのリグニン除去は、リグニンが希硫酸存在下で部分分解し酢酸に溶解することを利用した。

割り箸を原料として実験室的に甘味料を作成することは実用化までに安全性やコスト面を含めて多くの課題があるが、これらを割り引いても大量にある木材資源の有効利用として古くて新しいロマンのある課題である。そこで最後に、リグニン除去した割り箸から糖蜜液を大量調製し、官能試験で実際に甘味を感じられるかを確認することとした。

2)   方法

(1)  材料

  • 割り箸(市販品)

(2)  器具・装置

  • ドラフトチャンバー
  • マントルヒーター
  • 500mL容丸底フラスコ
  • 500mlコニカルビーカー
  • メスピペット
  • 冷却管
  • 薬さじ
  • 電子天秤
  • ブフナー漏斗
  • アスピレーター
  • ゴム管

(3)  試薬

  • 硫酸
  • 酢酸
  • アセトン
  • 水酸化ナトリウム
  • フェノール試薬;フェノール(C6H5OH) 10.0gに水180 mlを加え溶解し200 mlとする。褐色ビンに保存
  • グルコース標準液;ブドウ糖0 g (精秤)→100 ml (10 mg/ml)、腐りやすいので使用時に調製

(4)  操作

(a)  割り箸のリグニン除去

実験操作の概要を図4-1に示す。割り箸はナイフまたは鉛筆削りで細かく裁断した。裁断した割り箸50gを丸底フラスコに移し、そこに酢酸225mlを加え、さらにH2O 12.5mlを混合して酢酸の蒸気が冷却管に達するまで加熱後、30分間この状態を維持した(酢酸による乾留)。次に、室温まで冷却後、1M H2SO4 8.4ml、H2O 4.3mlを加え(リグニンの部分分解のための触媒)、さらに乾留(図4-2参照)を240分間行った。終了後、2M NaOH 10mlを加えアスピレーターを用いて、吸引ろ過を行った。ケーキは水で酢酸臭がなくなるまでよく洗った後、アセトン約200mLで洗浄した。得られたケーキはアセトン臭がなくなるまで一夜風乾し、リグニンを除去した割り箸の試料とした。

(b)  リグニン除去した割り箸から糖蜜液の調製

糖蜜液の調製は、試料として裁断した割り箸及びリグニン除去割り箸の2種類を用いた。これらの2種類の試料について、3章2)-(5)-(b)(c)と同様の操作を行い、硫酸を用いて試料を加水分解後、添加した硫酸を除去し糖蜜液とした。

(c)  糖蜜液のグルコースの定量

割り箸及びリグニン除去割り箸から調製した糖蜜液を、3章2)-(5)-(d)で示した方法と同様の操作を行い、トーブラー・クライナー法を用いてグルコースの定量を行った。

次にグルコース以外に糖類が含まれている可能性を確認するために、以下に示すフェノール硫酸法により全糖量の定量を行った。

(d)  糖蜜液の全糖量の定量

割り箸及びリグニン除去割り箸から調製した糖蜜液を試験管に1ml、フェノール試薬を1ml加え混合を行った。更に98%硫酸5ml加え混合し、水浴中で15分間冷却を行った。その後490nm吸光度測定により全糖量の定量を行った。なお、標準液はグルコース(標準液を50倍希釈して使用)を用いて、以下に示す溶液を作成して検量線とした。

(e)  糖蜜液の調製

試料1gを3章(2)-(5)-(b))で示した操作と同様に硫酸を用いて試料を加水分解した。

(f) 糖蜜液の大量調製(図4-4)

2L容三角フラスコに水60mlを入れ、フラスコを水で冷却しながら98%硫酸294gを加える。室温まで冷却後試料20gを加え1夜放置し十分にグルコースを生成させた。つぎに、水800mlを加え反応を停止させた。硫酸を沈殿させて除去するために水酸化バリウム・8水塩を約500g加えた。中和点は、pH試験紙(BCP;ブロムクレゾールパープル)の変色域で決定した。中和した硫酸バリウムを含む糖蜜液は濾過により硫酸バリウムを除き透明な溶液約500mlを得た(3章の方法に対して4倍濃縮液)。

(g) 糖蜜液の濃縮(図4-4)

得られた糖蜜液はウォーターバスで60~70℃に加温・送風することで12-13ml程度まで濃縮した。所要時間は延50~70時間を要した。

(h) 官能試験(図4-4)

試料の分解率40%(後述の実験結果から推定)で糖蜜液の収率を25%、濃縮による分解(ロス)を50%と推定した。トータル収率は約5%で、グルコースが12ml水溶液に1.0g存在する計算となる(収率約8%)。グルコース水溶液の甘味は3%でほんのり甘い程度であることから、官能試験が可能な量と考えた。

濃縮糖蜜液1mlを被験液とした。パネラーは班員5名及び講師の6名で行った。被験液1mlを口に入れて味わい風味を確認後吐き出した。

3)   結果と考察

(1)  割り箸のリグニン除去

リグニン除去は裁断した割り箸をそれぞれ50g用いて2回実施し、ほぼ同様の収量で処理を行った。乾留中の写真を図4-2に示す。

収量   1回目         12.3(g)

         2回目         10.4(g)

最初の30分の乾留は触媒である硫酸を添加していないため、ほとんど酢酸が着色していないが、次の4時間の乾留中にリグニンが酢酸に溶け出しコーヒー色になっていく状態を確認した。このコーヒー色の酢酸には割り箸に含まれていたリグニンが溶解しているものと考えられる。

処理の終了した割り箸の懸濁液は、セルロースが懸濁しリグニンが溶解した酢酸溶液であることから、ろ過によりリグニンを含む酢酸溶液とセルロースを含む残渣に分離した。リグニンを含む酢酸はろ過抵抗が大きく、ろ過速度があまり出なかったが、水洗とともに流速が速くなった。水洗はほぼ無色透明になるまで行った(約400ml)。

水洗後、アセトン洗浄により疎水性のより高いリグニンを除去した。アセトン洗浄したろ液は、最初は褐色であったが徐々に着色成分が少なくなり、ろ液がわずかに褐色な状態となった時点(アセトン約300ml使用)で洗浄を終了した。

(2)  リグニン除去による糖蜜液の糖濃度の変化

試料各1gを用いて糖蜜液を調製し、トーブラー・グライナー法およびフェノール硫酸法で定量したグルコース及び全糖量を表4-1および図4-3に示した。これによりグルコース及び全糖量がどちらも約3.1倍上昇していることが分かる。リグニン除去することにより大幅に上昇させることに成功した。

(3)  糖蜜液の大量調製および官能試験

ほんのりとした甘さを感じたが極めて苦かった。さらに1%、3%、5%の純グルコース液と比較した結果、1%と同程度だと感じられ、さらに精製することが必要だと判明した。(図4-5参照)

4)   まとめ

今回の実験を踏まえて効率的な加水分解条件の開発、酵素法との比較、安価な硫酸除去方法の開発、精製による風味の良い糖蜜液の調製等の課題が必要であることが考えられた。

4章      総括

日本の食品廃棄量は年間約1800万トンにも及び、食品輸入国であるとともに廃棄物大国でもあるといえる。この食品廃棄物はほとんどが焼却または埋め立てされ利用されていない。この廃棄物の中で最も多く含まれる成分はセルロースと考えられるが、難分解性であり有効利用が困難とされてきた。セルロースは、グルコースが直鎖状にb-1,4結合したポリマーであるため、グルコースを生成することが可能である。本研究では食品廃棄物に含まれるセルロースから化学法を用いてグルコースを含む糖蜜を作製することを目的とした。

試料は、割り箸及び食品廃棄物(バナナ、キウイ、パイナップル、トウモロコシ)を用いた。糖蜜の調製は試料72%硫酸を用いて加水分解し、続いて水酸化バリウムを用いて硫酸の除去により行った。生成したグルコースはトーブラー・クライナー法により定量した。さらに割り箸に含まれるリグニンを除去するために酢酸を用いて乾留を行った。

割り箸50gからリグニン除去処理(以降処理と表記)により試料20gを得た。糖蜜液を調製し比較を行ったところ、グルコース生成量は食品廃棄物、割り箸および処理割り箸はそれぞれ5%、7%、22%であり、処理割り箸がもっとも多かった。さらに全糖量の測定を行ったところ処理割り箸は47%であり、その他の糖が約20%含まれていた。実用化のためには効率的な加水分解条件の開発、酵素法との比較、安価な硫酸除去方法の開発が必要だと考えられた。

5章     参考文献

1)”Earth’s Energy Budget”,Oklahoma Climatological Survey

2) 佐々木尭, 日本食品工業学会誌.28巻9号508-515,1981年

3) 石川雅紀,小林理沙,食品と容器,2015 VOL.56 NO.7

4) 保井淳,国次純,西嶋渉,岡田光正,環境科学会誌.14巻165-171頁,2001年

5) 菅原康里,高橋璋,繊維学会誌,41巻,53-58頁,1988年

6) H. Tauber and I. S. Kleiner, J. Biol. Chem., 99, 249 (1932)

6章     謝辞

本研究を遂行するにあたり、多くの皆さまにご指導及びご協力いただきましたことに心より感謝申し上げます。特に、指導講師である山下治之先生には長い期間にわたり、研究の進め方や論文の書き方など、ひとかたならぬご指導を賜りました。どれほど言葉を尽くしても足りないほど、感謝しております。最後まで本当にありがとうございました。最後になりましたが、これまで温かい目で見守ってご支援下さった、この場に書ききれない多くのご協力いただいた皆様に深い感謝の意を表して謝辞といたします。

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