リコンビナント抗体作製法の確立

研究先 東京理科大学 生命医科学研究所 分子病態部門 久保研究室
コース 動物バイオコース

【目的】特定のエピトープを認識する抗体の作製は、ハイブリドーマ技術により飛躍的に進歩した。しかしこの技術には、特定の薬剤耐性を持ったミエローマ細胞の存在が不可欠であり、技術的にマウス・ラットなどの動物種に限局されたものとなっている。また、現行存在するようなハイブリドーマでも、アイソタイプのクラスによりその利用範囲が制限されてしまう。これら問題を克服するため、我々がこれまで樹立してきたIgMクラスのハイブリドーマを、リコンビナント技術を用いてIgGクラスの抗体へと組み換えるカセットを構築する試みを行った。そこで、当研究所が樹立したE4BP4抗原を特異的に認識するIgM抗体をベースにIgG抗体へ切り替えることを目的とした。

【方法】本研究計画では、E4BP4抗体産生ハイブリドーマよりTotal RNAを抽出し、cDNAを調整した後、C領域に相当するprimerを用いて超可変(V)領域を含んだ領域のsequence を明らかにする目的で、次世代シークエンサーを用いて解析した。L鎖H鎖、それぞれのsequenceをベクターにインサートするために制限酵素サイトを含むprimerを作成しPCRをかけ泳動にてバンドの確認をした。

【結果】L鎖H鎖、それぞれのsequenceが得られ、制限酵素サイトを含むPrimerを用いてPCR産物が得られた。

目次

【序論】... 2

【目的】... 3

【材料と方法】... 4

【材料】... 4

細胞培養... 4

RNA抽出... 4

RNA量測定... 4

cDNA合成(SMARTer RACE 5’/3’ kit) 4

次世代シークエンサー(PC) 5

L鎖に使用するベクター... 5

H鎖に使用するベクター... 5

アガロース電気泳動... 5

KOD FX neo Kit(PCR kit) 5

Nanodrop(DNA測定機器) 5

【方法】... 6

細胞培養... 6

RNA抽出... 6

RNA量測定... 6

cDNA合成... 7

次世代シークエンサーによる塩基配列の解析... 7

制限酵素サイト含むPrimerを用いてPCRをかけベクターへインサート... 7

【結果】... 11

【考察】... 14

【参考文献】... 15

【謝辞】... 16

【序論】

モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞作製法が確立されて以来、抗原に対して特定のエピトープを認識する抗体の作製が大きく進歩した。

しかしハイブリドーマを作製するにあたって、特定の薬剤耐性を持つミエローマ細胞を使用しなければならず、うさぎやニワトリでも使用可能なミエローマは存在するが、汎用性が低いため主にマウスやラットに限定されてしまう。

また、今存在するようなハイブリドーマでも、アイソタイプのクラスによりその利用範囲が限られてしまう。たとえば、5量体であるIgMクラスの抗体は、単量体であるIgGより分子量が大きくポリペプチドであるJ鎖を中心に持っており、その周りに定常領域が位置するためProtein AやProtein Gには結合できず、可変領域と弱く結合するため免疫沈降法やクロマチン沈降法などの実験には不向きとされている。

さらに、ヒトの抗体療法に使われる生物製剤では、抗体は異種でしか作ることができないのにもかかわらず、異種で構築したハイブリドーマは異種に対する免疫反応が起こるため使うことができない。

そこで、リコンビナント技術を用いる事で上記の問題を克服することが可能になると考えた。リコンビナント技術とは、遺伝子工学的技術を用いて複製が可能なDNA断片を、L鎖H鎖それぞれの超可変領域に相当するように設計し、別のDNAへ結合させて組換え体を作る方法である。

それによって、IgMクラスをIgGへ組み替えることが可能になる他、微量にしか発現しない有用なタンパク質を大量に発現させることができる。

また、このリコンビナント法にファージディスプレイを組み合わせることにより、ハイブリドーマが持つ結合能力を向上させることが可能となる。

ファージディスプレイとは、大腸菌ウイルスであるバクテリオファージを使用した新しい利用方法であり、様々な分子に結合するアミノ酸配列を同定し、ペプチドやタンパク質の設計に有効である。このような手法で得られたペプチドやタンパク質は、タンパク質の設計原理の解明、また薬剤の開発などに応用展開を行うことが可能である。

【目的】

これら序論の問題を克服するため、当研究所が樹立したE4BP4抗原を特異的に認識するIgM抗体をベースに、IgG抗体へリコンビナント法を用いて切り替える方法を確立する事を目的とした。

【材料と方法】

【材料】

細胞培養

・ハイブリドーマ細胞 3sample(E4BP4抗原を特異的に認識するIgM抗体産生細胞)

・RPMI1640培地

・抗生剤(ペニシリンストレプトマイシン、ピルビン酸)

・FCS(REHATUIM)

・BM培地(BMコンディムド H1)

・トリパンブルー

・1.5ml tube

・15ml tube

・50ml tube

・パスツールピペット

・5ml individual pipet

・10ml individual pipet

RNA抽出

・Maxwell RSC(RNA抽出機器)

・Thioglycerol/Homogenization solution

・RNA抽出カートリッジ

・Elution tube

・Elution Buffer

・Plunger

・DNase

・DW

RNA量測定

・Quantus(RNA量測定機器)

・Nuclease-Free Water

・0.5ml Tube

・20×TE Buffer

・RNA Standard solution

・QuantiFluor RNA Dye

cDNA合成(SMARTer RACE 5’/3’ kit)

・5×First-Standard Buffer

・DDT solution(100mM)

・dNTPs solution(20mM)

・RNA(10μg~500μg)

・5’-CDS PrimerA

・Sterile H2O

・RNase Inhibitor(40U/μl)

・SMART Scribe Reverse Transcriptase

・SMARTer ⅡA オリゴヌクレオチド

・トリシン-EDTA Buffer

次世代シークエンサー(PC)

・IMGT database

L鎖に使用するベクター

・pFUSE2ss_CLIg_mk(InvivoGen)

H鎖に使用するベクター

・pFUSEss_CHIg_mG1(InvivoGen)

アガロース電気泳動

・1×TAE

・アガロース(粉末状)

・1.5%ゲル

・EtBr

KOD FX neo Kit(PCR kit)

Nanodrop(DNA測定機器)

【方法】

細胞培養

始めに、研究室に保管されていたE4BP4を特異的に認識するIgM抗体産生する3サンプル(2G6、3G6、3E6)のハイブリドーマ細胞を起こし培養を始めるために培地を作製した。RPMI1640培地500mlに、ペニシリンストレプトマイシンとピルビン酸を1%になるように加え抗生剤入りの培地を作製した。液体窒素から取り出した3サンプルの細胞を37℃のウォーターバスに5秒ほどつけ表面を溶かし、クリーベンチ内にて5ml培地を入れた15ml tubeに加えて1400rpm,4℃で遠心した。上清を除去し10mlの培地を加えセルカウントした。セルカウントはトリパンブルーと細胞溶液を等量で混合し使用した。

そして6well plateに1×105cell/wellで撒くように計算し、3サンプルの細胞培養を始めた。

翌日に、起眠直後だったためか生細胞が死にかかっていたためBM培地を加え生細胞の増殖を促進させた。

RNA抽出

細胞培養を行なった3サンプルからRNAを抽出するために、セルカウントした後1×106cell/mlになるよう培養液を回収しそれぞれ15ml tubeにいれた。クリーンベンチから外へ持ち出し、Maxwell機器を使用する準備をした。

最初に、3サンプルを1400rpm、4℃で遠心分離をして上清を除去した。ペレットに冷却した

1-Thioglycerol/Homogenization solutionを200μlずつ加え、ペレットが溶解するまでボルテックスにて撹拌した。次に、Lysis Bufferを200μlずつ加え15秒間ボルテックスし攪拌した。

次に、RNA用のカートリッジを機器に検体分セットし、同時に機器へ抽出したRNAを受け取るElution tubeをセットしNuclease-Free Waterを50μlずつ加えた。カートリッジのwell8にプランジャーをセットしDNaseⅠをwell4に5μlずつ添加した。そして、約400μlのサンプル溶液をwell1に添加し、精製操作を開始した。

機器が止まり精製終了した後、RNAが入っているElution tubeを取り出し、RNA量測定のため各サンプルに名前を表記し氷上に静置した。

RNA量測定

最初に、kitでついてきた20×TEをNuclease-Free Waterで20倍希釈し6mlの1×TEを調製した。次に、発色溶液としてRNA Dyeを1×TEで200倍希釈しこれをWorking Solutionとし、6ml調製した。最後にBlankとして1×TEを使用するため、サンプル、Standard、Blankで0.5ml tubeを用意した。Blankに1×TEを100μl、サンプルには98μl、Standardには95μlずつ加えた。

サンプルに抽出したRNA溶液を2μlずつ加え、StandardにRNA Standard solutionを2μl加えた。すべて100μlに調製したところで、全てにWorking Solutionを100μlずつ加え遮光して、室温で5分間インキュベートした。

 取り出したら、Quantus機器にて操作しBlankとStandardを読み込み登録した後、3サンプルを読み込み、RNA量を記録した。残りのRNAは-80℃で保管した。

cDNA合成

SMARTer RACE 5’/3’ kitを使用してcDNA合成をした。作業はRNA用クリーンベンチで行った。

最初にMixture1として5×First-Standard Bufferを2μl、DDTを0.25μl、dNTPsを0.5μlを混合させスピンダウンさせて室温静置させた。次に、Mixture2としてRNAを10~500ng(今回は470ng)で0.5μl、5’-CDS PrimerAを0.5μl、Stelile H2Oを4.5μlを混合してスピンダウンPCRで72℃ 3分、42℃ 2分を1サイクル行い、SMARTer ⅡA オリゴヌクレオチドを0.5μl加えて氷上で一時保管した。次にMixture3を調製するため、Mixture1、RNase Inhibitorを0.25μl、SMART Scribe Reverse Transcriptaseを1.0μlを混合し調製した。最後にMixture2とMixture3を混合し優しくピペッティングとスピンダウンしPCRにて42℃ 90分、70℃ 10分を1サイクル行いnanodrop機器にてDNA量測定した。DNA<200ngであったので、トリシン-EDTA Bufferを10μl加えて-30℃にて保管した。

次世代シークエンサーによる塩基配列の解析

cDNA合成したDNAを次世代シークエンサーによって塩基配列の解析を行った。

IMGT databaseの定常領域のデータをPrimerとして用いて、超可変部領域にあたるDNAを解析しシークエンスが得られた。

制限酵素サイト含むPrimerを用いてPCRをかけベクターへインサート

得られたシークエンスをL鎖H鎖それぞれのベクターにインサートする目的で制限酵素サイトを含むPrimerを用いてPCRを行い、cDNAを突出末端にした。

最初に、冷凍保管していたcDNAを氷上で溶かしPCRの準備をした。

3サンプルに対して、DW 2.2μl、2×PCR Buffer 7.5μl、2mM dNTP 3μl、forwardとreverseをそれぞれ0.3μずつ加え、最後にKOD FX neoという酵素を0.3μlと各サンプルのDNAを1.0μl加えてtotal 15μlのPCR溶液を調製した。この時、3サンプルをL鎖H鎖それぞれで行うため、6サンプルになった。PCR設定は、94℃ 2分を1サイクル、98℃ 10分、60℃ 30秒、68℃ 2分30秒を20サイクル、68℃ 10分を1サイクル、で設定しPCRをかけた。各6サンプルのPCR産物に6×Dyeを3μl加え1×TAEを緩衝液として使用し1.5%アガロースゲルにアプライし電気泳動を行い、VDJ領域である400bpに出るかどうか確認した。

【結果】

【考察】

今回はベクターにインサートするまでの実験を行い、最後に作製したPrimerによってPCR産物が増幅したため突出末端になっていると思われるのでインサートが可能だと考えられる。ベクターに入れて、大腸菌にて複製させるが、PCR産物が突出末端になっていない可能性も捨てきれないためTOPOというベクターにまずインサートし、大腸菌に導入して増えるかどうか確認していくと思われる。TOPOの方で無事に複製ができていれば、残りのPCR産物をL鎖H鎖それぞれのベクターへインサートし、大腸菌に導入しコロニーを回収し泳動にて確認して行くと考える。

L鎖H鎖それぞれの大腸菌コロニーを確立した場合、HEK細胞という付着細胞へトランスフェクトし抗体作製をしていくと考える。そして細胞培養を始め、上清から抗体産生されているかどうかをELISA法によって評価していくと考えられる。

【参考文献】

インターネット参照

・全RNAからのcDNA合成

・生体機能物質工学実験Ⅱ

・抗体精製をマスターしよう

・遺伝子導入実験ハンドブック

・C型レクチンン受容体DCIRはT細部からのAFN-γ産生を制御することで骨の恒常性を維持する(丸橋拓海、海部知則ら)

【謝辞】

東京理科大学、生命医科学研究所、分子病態部門、久保研究室の久保 允人教授を始め、助力してくださった研究員の佐々木 貴紀様、技術員の島岡 達郎様、原田 康代様、氷室 智美様に厚く御礼を申し上げます。ご協力ありがとうございました。また、このような勉学の機会を与えてくださった東京バイオテクノロジー専門学校の先生方にも厚く御礼申し上げます。

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