平成22年度 食品開発コース卒業研究の紹介
カラフル米麺の開発
【目的】
米麺とは、米粉(うるちまたはもち)を主原料にでんぷん、食塩等を添加して製麺したもので、ベトナムのフォー、ブン、タイのセンミー、中国南部のビーフンが有名である。
我国においても、抹茶、梅肉、鶏卵あるいは天然色素を用いて着色した生、半生、乾麺が数種存在するが、あまり一般的ではない。そこで、本研究では天然食材の色を活かした新しいタイプの米麺を開発することを目的とした。
【方法】
製麺は次の方法で行った。
米粉(国産うるち米)、でんぷん(馬鈴薯、キャッサバ)、水を任意の割合で使用し、十分に混捏後生地を1cmほどの厚さにして5分間蒸煮した。蒸しあがっ た生地を、麺棒を用いて圧延し、米粉で打ち粉をしてからパスタマシーンを用いてさらに厚さ1mmに圧延した。その後4℃、18時間、ついで温度50℃・湿 度65~85%の空間で18時間乾燥させてから幅5mm、長さ30cm程度に切断して作製した。
乾燥状態確認のため、この米麺ならびに市販品を 水分測定に供した。さらに、着色を主な目的として6種類の副原料(イカ墨、ムラサキイモ、桜エビ、ホウレン草、ウコン+金ゴマ)を添加し、麺を作製するこ とを試みた。また、完成した5種類の麺を栄養成分分析に供するとともに、一部特定成分の測定を行った。
【結果】
官能検査結果よ り、麺生地の主原料を米粉・キャッサバでんぷん・水(41:18:40)とした。副原料の配合割合はイカ墨(0.05%)~金ゴマ(2%)と求められた。 完成品の栄養成分はおおむね類似しており、水分11.7~13.2%、タンパク質3.7~4.7%、炭水化物81.3~83.3%、脂質0~1.9%およ び灰分0.3~0.6%であり、カビ発生防止となる水分13.5%を下回ることが出来た。
これらの結果は添加した副原料の成分を反映しており、原子吸光法により求められたカルシウムは桜エビ麺の3mg/100g、鉄はホウレン草麺の0.8mg/100gが最も高かった。
特定成分としてHPLC法により求めたウコン麺中のクルクミンが4.2mg/100g、没食子酸を標準として用いた吸光光度法により求めたムラサキイモ麺中のアントシアニンは20.8mg/100gであった。包装形態等を現在検討中である。
緑黄色野菜と魚介の健康スープの開発 ~うら漉しと丸ごと~
【目的】
近年、日本の食生活において野菜離れと魚離れが顕著である。
本研究は、野菜の中でも栄養価の高い緑黄色野菜と肝臓機能を高めるオルニチンまたはタウリンを多く含有する魚介類、あるいは最近開発された発酵オルニチン (協和発酵バイオ製造、食品)を組み合わせて健康志向のスープを開発し、完成品の成分分析と保存試験を行うことを目的とした。
【方法】
緑黄色野菜はβ‐カロテン含有量、風味、色調の観点から、にんじん、赤ピーマン、かぼちゃ、トマト、小松菜の5種類とし、野菜全体を用いる丸ごとタイプとさらし布で漉したうら漉しタイプの2種類を作製した。
魚 介類の種類をタコ(うら漉し10%、丸ごと5%)とし、オルニチンの供給源として発酵オルニチン(丸ごとのみ130mg/100g添加)を用いた。スープ 濃度を2倍濃縮タイプ、容器をガラス瓶(100ml容)として微生物増殖防止のため、製品のpHと殺菌条件を検討した。
【結果】
種々の製品pHとオートクレーブ殺菌試験の結果、製品pHは4.7前後、殺菌条件は105℃、15分間が妥当と判断された。
分 析の結果、うら漉しと丸ごとの灰分、水分、食塩、ビタミンC、ポリフェノールはほとんど差がなかったが、β-カロテン(永田らの方法)は丸ごと 1mg/100g、うら漉し 0.1mgと丸ごとの方が10倍多く、粗繊維(AOAC法)は丸ごと0.2%、うら漉し0.1%と丸ごとの方が2倍多かった。冷蔵、室温、37℃のすべて の保存条件において、保存性決定の目安となる色調(肉眼および色彩色差計)、風味、β-カロテン量、粘度の項目で、うら漉しは本研究における保存日数限度 内の120日間、丸ごとは同じく80日間、製造直後とほとんど変化がなく安定であった。この製品のQ10は2~2.5と推定されるので、加速条件の37℃ 保存結果から、常温(東京の平均気温16℃)で1.5年以上の長期保存性が期待される。
なお、HPLC分析によるタウリン含量はうら漉 し:57mg/100g、丸ごと:35mg、オルニチン含量は丸ごと:64mgであった。タウリン含量は原料(冷凍解凍真ダコ)由来をほぼ反映していた が、オルニチン含量に関しては添加量の1/2にとどまり課題として残った。
新しい燻製材およびソミュール液の開発
【目的】
燻製とは、肉や魚などの食材をソミュール液(ハーブ等を含有した高濃度食塩水)に漬け込んだ後、スモークウッドやチップで燻煙するものである。
そ の結果、水分活性を下げ保存性を高めるとともに、特有の香りや色を付加することができる。保存技術の発達した現代ではその意味合いは失われ、独特の食感や 味わいを楽しむためのものへと変化しつつある。そこで、本研究では新しいタイプのソミュール液、燻製材の開発を試みた。
【方法】
ま ず、ベースとなる基本ソミュール液(水1ℓに対し塩100g、料理酒100mℓ、砂糖50g)に16種の香辛料をそれぞれ添加した。これらに鶏のささ身を 浸漬、比較的くせの無いヒッコリーウッドを用いて燻製を作製、官能検査に供して適した香辛料を決定後最適な添加量を求めた。さらに、完成したソミュール液 の栄養成分分析を行なうとともに、各食材との相性を確認した。一方、燻製材を作製するため、市販ウッドをミルサーで粉末状にし、水とでんぷんのりを適宜加 え直方体(2×2×9cm)に整形し、乾燥させた。
さらに、香気を付与する目的で数種の蒸留酒およびピート(泥炭)を添加することも試みた。また、これらウッドを用いた燻製の官能評価も行なった。
【結果】
完 成した2種類のソミュール液(和風:しょうが3%、山椒1%、わさび0.2%添加、中華風:カルダモン3%、にんにく1%、八角1%添加)の栄養成分は 100gあたり、水分:78.4g(和);78.7g(中)、タンパク質:0.1g;0.1g、脂質:0.8g;0.9g 、炭水化物:11.3g;11.2g、灰分:9.4g;9.1g、食物繊維:0.4g;0.1gおよびナトリウム:4,700mg;4,320mgであっ た。
2点嗜好試験法の結果、各食材(畜肉や魚貝類)との相性は和風ソミュールが良好である傾向が見られた。
作製したスモークウッドに対する、ウイスキーやラムまたはピートの添加により、燻煙の芳香性が著しく向上した。鶏肉を用いた3点嗜好試験によれば、ピート、ウイスキーを添加したウッドによる燻製が好まれた。
最終的に、栄養成分を記載したペットボトルに充填したソミュール液、ならびに真空パックしたウッドの製品化を行なった。